視診では一見問題なさそうでも金属は不透明で中が見えないため、外してみるとむし歯が進んでいることがよくあります。
レントゲンでは金属は白く写ります。むし歯の領域は、細菌によって歯の硬組織(エナメル質、象牙質)が溶かされるので、黒く透過像として反映されます。この症例では左上の歯の金属の下がむし歯になっていることが分かります。
むし歯の進行程度によっては歯を削らないで経過観察を継続し、定期的なメインテナンス時にレントゲン撮影(2年に1回)、口腔内写真撮影(毎年)を行い、極力歯を削らないで済むように努める。
但し、むし歯のリスク検査(唾液検査)を行った上で経過を追うようにする。
リスクが高い状態で経過を診るのはむし歯の進行をただ待つに等しい。
金属・セラミックなどの人工物と歯の隙間、適合状態をマイクロスコープにて慎重に確認し、レントゲンと口腔内写真の資料と合わせてご本人に状態を説明させていただく。
人工物を除去して再治療が望ましい場合にはご本人様の同意のもと治療に取り掛かる。
むし歯は歯の硬組織(エナメル質、象牙質)に細菌が感染した疾患であるため、病巣の無菌化を図ることが出来れば敢えて歯髄組織を取る必要はないのです。
3Mix-MP法の原則に則り、3種類の抗生剤をう窩に貼薬し、歯髄組織の温存を図ります
歯の歯髄(神経と血管の組織)に炎症または感染を起こした際には根管治療が必要になります。
根管治療の際、必ず守るべきことは“根管の無菌処置”です。
従って、最初に根管治療を受けられる場合の治療内容が歯の予後を決めると言っても過言ではないでしょう。
根管治療に関しては別項を参照してください。
当医院では、むし歯の進行度に応じて、次のような治療を行います。
エナメル質表層のむし歯(初期のむし歯)は基本的には歯の再石灰化を促進させるこで進行を抑制することに全力を挙げます。
象牙質の狭い範囲に留まる軽度のむし歯では、患部を削り、レジン(合成樹脂)を詰める治療を行う場合もあります。
レジンは天然の歯に近い色ですので、見た目も自然に仕上がります。型取りの必要がなく、基本的に1回の治療で済むことが多いため、皆様の通院回数という点では負担が少なく済みますが、決して半永久的に持つものではありません。
中等度のむし歯の場合、患部を削ってその部分に詰め物をするところは軽度のむし歯と同じですが、患部に合わせた型を取り、その型をもとに詰め物や被せ物を作って患部を補う治療を行います。精度の高い治療ほど、予後が良くなることは言うまでもありません。
詰め物や被せ物の素材は、皆様の症例やご希望に合わせて最適のものをご提案します。
むし歯による細菌感染が歯髄(歯の神経と血管組織)まで広がってしまうと、詰め物や被せ物の治療を行う前に、歯髄を取り除く「根管治療」が必要になります。根管治療は、自分の歯を残すための最後の手段であり、高い精度が求められます。
※3mix治療法
歯髄組織を保存するために、敢えて感染歯質を取り残し、3種類の抗生剤を隙間なく詰めることで感染歯質(感染領域)を無菌化する治療法をケースによっては適応しています。
根管治療に関しては別項を参照してください。
2.感染歯質を除去し、良好な根管治療が行える状態にする
3.歯質の失われたところに隔壁を作製し、ラバーダム防湿ができるように環境を整える
4.無菌的な根管治療を行うためには唾液の根管への進入を防ぎ、根管洗浄に使う薬液が漏れないようにラバーダム防湿を必ず行う
抜髄とは歯の神経(歯髄組織)を抜く処置です。神経を保存するためのあらゆる手を尽くしても神経を取らざるを得なくなった場合には、歯の予後を高めるために根管内を無菌的な状態にし、神経に代わるお薬を根管内に緊密に充填する必要があります。
歯の神経(歯髄組織)は壊死しており、根管内の免疫系等が働かないために人為的に腐敗した根管内組織を除去、薬液洗浄し、根管内を無菌化する治療。
以前に根管治療をしている歯でも無菌的な治療が行われていない、または感染源の取り残しが存在すれば時間の経過とともに歯質は悪化の一途を辿ります。神経がないので歯がしみるような症状は出ませんが、慢性炎症が根尖部(根の先端部分)にあるため、睡眠不足や疲労が重なったりして身体の抵抗力、免疫力が低下すると炎症部分に違和感などの症状が発現します。
以下は再根管治療の一例です。
3.歯質の感染と以前の治療によって詰められた根管のお薬の腐敗も確認。歯質自体も部分的に軟かくなっている。
4.根管治療に際して無菌化を図るためのラバーダム防湿を行い治療を開始したところ、根の先端部分に溜まっていた膿が溢出してきた。このような膿が身体に存在して良いことは勿論ない。
アメリカの根の治療専門医の成功率(Orstavik D 2007, Setzer FC 2010)
科学論文的にも再根管治療においては治療の成功率は60~70%程度とされています。根管内の細菌感染を取り除けば多くの症例では改善に向かいますが、根管内は複雑であるため、どのようなアプローチを行っても完全に無菌化できないこともあります。
※根管内の感染が進み、閾値を超える細菌数まで増えると根の先端に病巣が出来てきます。根管治療によって治療前よりも根管内の細菌数が約75%減少すると、患者さんの免疫力や根管内の複雑な形態にもよりますが、組織学的な治癒が始まります。
※根管内の治療に使われる器具では根管内の35%以上が触られていないという論文もあることから、根管治療の際には必ず根管内を数種類の薬液を交互洗浄し、超音波を使って攪拌し、象牙細管から腐敗した物質を取り除くことが必要です。
また、上記の成功率はあくまで根管由来の問題が解決できる可能性であり、“根管の問題解決=歯の長期予後の保証”とはならないのです。
治療する歯を長期的に保存可能にするためには様々な要因を考慮する必要があり、根管治療を検討する場合にはより時間をとって説明をさせて頂きます。
「以前から右上の奥歯に何となく違和感があったのですが、数日前から激しい痛みを伴うようになってきました。」とは定期的なメンテナンスに通われている患者さんの言葉である。通常のレントゲン診査では病巣らしき影は認められず、念のため歯科用CT撮影を行ったところ、はっきりとした根尖病巣を確認することが出来た。但し、患者さんの訴える歯とは異なる箇所の病巣であり、診査診断には慎重を期した。結果的には無症状の歯に痛みが伝播したことが判明し、診断通りに病巣を確認できた歯の治療を行うことになった。数日後、2回目の感染根管治療でお越し頂いた際に、「先生、長年偏頭痛があったのですが、前回歯の治療をしてからその頭痛が嘘のように無くなりました。頭痛薬を全く服用していません。」と嬉しいお言葉を頂いた。慢性炎症が常に抗原として免疫系を刺激し続ける要因となり、その結果として慢性免疫病の元凶となっている典型的な例である。不幸にして過去の歯科治療に於いて歯の歯髄組織(歯の血管と神経の組織)を抜く治療を受けたにもかかわらず、根管内の無菌化が行われなかった結果、根尖部に慢性炎症を引き起こしてしまうことが原因である。扁桃炎や口腔内の細菌感染、感染根管が引き起こす慢性根尖性歯周組織炎は頭痛のみならず、腎炎リウマチ、心臓弁膜症などを引き起こす可能性があるという病巣感染の概念は、20世紀気初頭にアメリカのビリングスという医師が唱えた理論として知られている。原因不明の偏頭痛に悩まされている方で、過去に歯の神経を取っている歯がある方は、きちんとした歯科の診査を受けられることも検討して頂きたい。
歯科先進国アメリカでは、根管治療をする際に「マイクロスコープ」という歯科用の専門的な顕微鏡を使うことが法律で定められています。マイクロスコープで視野を拡大し、患部周辺を明るく照らすことで、より精密な治療を行うことが可能になるためです。逆に、マイクロスコープを使わない従来の治療では、目視できない根管の内部をほぼ手探り状態で処置しなければならず、精度の高い治療は望めません。
通常、根管治療などの非常に狭い部位の治療においては直視が不可能であるために、その過程の多くは術者の勘とテクニックに大きく依存するという欠点があります。
しかし、たとえ熟練した歯科医師であっても、個々の歯の状態および解剖学的形態や状態はすべて異なるため、複雑な根管や難易度の高い根管においては対応できずに抜歯となるケースも発生しています。
そこで、マイクロスコープ(実体顕微鏡)があることによって、実際に根管を確認することができる、あるいは直視下のもと処置を行えるというメリットがうまれるのです。
肉眼では発見できない破折線の確認ができることもあり、診断ツールとしても根管治療にはなくてはならないものとなっています。
当医院では、マイクロスコープ(実態顕微鏡)を治療のあらゆる場面に用いることで総合的な治療レベルを上げるとともに、妥協のない治療を皆様に提供できると確信しております。