舌小帯短縮症は舌癒着症、舌強直症、舌小帯異常症、連舌など、また英語ではTongue-tieまたはAnkyloglossiaと様々な呼ばれ方をしていて、多様な呼称があるということは、この概念が混乱していることを物語っているのではないでしょうか。
舌小帯は舌の舌下面にある文字通りの小帯ですが、この小帯の制限された動きによって顎の成長不全が生じ、小さな顎に歯が並びきらないという状況が大変多く見受けられます。
成人の方の口腔内所見においても奥歯の治療を繰り返している方の特徴として、不正咬合に伴う上下奥歯の強い干渉(かみ合わせによる外傷)があり、そのような方の中には舌小帯の動きに制限のある方が診られます。
当医院において昨年12月以降に来院された方の口腔内診査において舌小帯を診査項目に加えたところ、舌小帯短縮症の疑いのある方の不正咬合発生率、口呼吸の割合は多く認められ、しかるべき時期に舌小帯短縮症に対する処置が行われていれば防げたのではないかと思われる歯科疾患も存在します。
また小児科医の伊藤康雄戦先生の著書には、「乳幼児の舌小帯短縮症では舌が伸びないために乳頭を包み込んで十分に口腔内に引き込むことができないために乳首は外れやすく、また口腔内で十分な陰圧を作ることができず哺乳に時間がかかり、乳児は哺乳に疲れて途中で眠ってしまうか、満足できずに不機嫌になる。」とあり、哺乳障害には乳児側の舌小帯の状態が大きくかかわっていることも大きな要因であり、歯科医院にて乳幼児へのアプローチが急がれるところです。
当医院では舌小帯短縮症・舌癒着症(Tongue-tie)/上唇小帯短縮症の診査診断を行い処置が望ましい方への小帯切除を行っておりますが、症状の程度によっては口腔外科医に執刀を依頼しております。