当医院の予約枠に占める子供の割合が徐々に多くなり、日によって夕方は咬み合わせのトレーニングをする子供達で賑やかです。学童期といわれる小学校時代は、精神面も、口腔内も変化が大きく対応が難しい場面もあるが、人格ある子供としてきちんと向き合えばしっかりと成果が得られる時期でもある。特に7つ、8つ、9つと、「つ」の付く間は親や教師など大人の言うことを聴く年齢であり、この時期に「口腔習癖」や「異常な兆候」を見逃さずに指導することは、健全な口腔機能を将来に亘って維持するうえでは非常に重要です。高学年ともなると、身体の急激な変化とともに精神的にも大きく変化し、自我が芽生え、大人の話を素直に聞けなくなる子供もいます。従って我々歯科医療従事者が子供に接する際には、年齢、学年による子供達の心情の変化を把握しながら臨床に取り組むことは基本です。とても時間に追われるような診療体系では、子供の内面にまで入り込むことは出来ません。当医院のミッションは“価値ある時間を提供する”であり、それは子供も大人も同じです。
スタンフォード大学の睡眠歯科学の第一人者であるAudrey yoon先生の講演を聴講し、小児における睡眠障害の現状を知る貴重な機会を得た。通常、睡眠障害の疑いがある場合に行うPSG検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)は、膨大な時間、費用、労力を必要とするため、特異度の高いスクリーニングを行うことで、重症度が高いと疑われる患者さんを識別できることが可能性が示唆されました。先ずスクリーニングは、罹患していないと思われる人の中から、罹患している可能性の高い人を大まかに選別するプロセスです。近年、SDB(睡眠呼吸障害)の早期診断に役立つ機能的気道スクリーニングツール(FAIREST-6)が研究者によって開発され、歯科医療現場でSDBのスクリーニングが可能となりました。また、睡眠医学の故Christian Guilleminault先生は、小児のSDBは口腔筋機能発達不全が関係しており、これは頭蓋顔面の発育に影響を及ぼすと述べています。さらに、94歳になられるJohn Mew先生は頭蓋顔面発育障害の指標として、鼻の頭と上の前歯の切端を結んだ線であるインジケーターライン「IL」の長さと上顎第一大臼歯間距離(「6-6間距離」)を挙げています。以上のことから、SDBと頭蓋顔面発育は関係していると考えられます。従って当医院では、FAIREST-6の1)口呼吸,2)頤(オトガイ)の緊張,3)口蓋扁桃肥大,4)舌小帯異常Tongue-tie,5)歯の咬耗,6)口蓋の狭窄、の有用性を確認しつつ、頭蓋顔面発育障害の前後的な指標であるILと左右対称的な指標である上顎6-6(E-E)間距離を調べることで、小児のSDBのスクリーニングをより簡便に行い、SDBの疑いが高い場合には、子供たちの健全な身体の成長を促進させるために早急にかみ合わせトレーニングを行うことを勧めています。
今までの歯科医療は、むし歯を被せ物などで形態を改善することを治療としてきましたが、乳幼児から成人への過程を通して健康な口腔機能を身につけることが正しい咀嚼・嚥下・呼吸・顔面形態・体幹を構成することが分かってきています。
歯並びを改善したいとお考えの方(特にお子様)は口腔周囲筋の機能向上を先ずは検討してみては如何でしょうか?
5人に4人の子供たちが咬み合わせに何らかの問題を抱えています。にもかかわらづ治療を先に(永久歯萌出まで)伸ばされていませんか?
その結果、ブラケット(ワイヤー矯正の装置)や抜歯治療に移行しているケースを散見します。不正咬合の原因が異常な習癖による口腔周囲筋の機能異常だとしたら、先ずは口呼吸や異常な嚥下や様々な癖にアプローチすることが咬み合わせを改善させる“原因除去”と考えることが自然ではないでしょうか?
顎顔面の周囲筋の異常は咬み合わせだけではなく姿勢・嚥下・口呼吸とも当然関係してきます。
お口を健康に保ってイキイキとした人生を送るためには、むし歯や歯周病になってしまったときの早期治療と、そうならないための予防が大切です。
また、一生を通して健やかに過ごすには、子どもの頃からの口腔ケアがとても重要です。
こちらでは、効果的な予防法と、大切なお子様の歯を守るために親御様に知っておいていただきたいことをご紹介します。
口腔機能の改善を‥‥
上下乳歯列は比較的きれいに並んでいる
7歳8ヶ月
永久歯の萌出に伴い上下歯列弓の乱れが生じてきた
10歳7ヵ月
親御さんが歯列の乱れ、咬み合わせの改善を検討し始める。
口呼吸を鼻呼吸へ、舌を含めた口腔周囲筋のトレーニングをプログラムに沿って毎日継続することによって顎顔面骨格の正しい方向への成長発育を誘導することで、結果的に顎骨に歯が生えるスペースが確保され、歯列が整いつつある。
子供の1年、1ヶ月、1週間、1日の成長は早い。できるだけ早期に機能の異常に気付き、早い段階で是正を図ることが、将来を通じて健康な身体を維持する基になるであろう。
筋機能的矯正治療の鍵は、ご両親とお子様から協力を得ることであり、それは固定式歯列矯正治療以上の結果を得るためには重要な部分です。
子供たちの咬み合わせのトレーニングを実施していると、慢性的に鼻が詰まっている、もしくは鼻が詰まりやすい子供を見かけます。なぜ鼻が詰まりやすいのでしょうか。慢性アレルギー性鼻炎だから?ではなぜアレルギー性鼻炎になるのでしょうか?当方は耳鼻咽喉科医ではありませんからその分野においては耳鼻咽喉科医に任せることになりますが、トレーニングによって口蓋が広がり上顎骨が前方に拡大してくるにしたがって、鼻の通りが良くなる子供たちがいます。鼻骨は上顎骨の拡大に伴って大きくなり、解剖学的に鼻の通りが良くなると考えることに何ら疑問はないと思われます。AJO-DOの2018年の論文では、頭蓋顔面の成長と咬合は呼吸によって影響を受けるとしています。鼻閉などが原因で舌が低位になり、口呼吸になると下顎が後退することで気道が狭くなる。気道を開いて呼吸するための代償作用として前方頭位を取らなければいけなくなる。呼吸と筋機能の問題が不正咬合を引き起こす。その根本原因を取り除かなければ症状が悪くなってしまうので、習癖が確認された時点で口腔周囲の筋機能トレーニングを行うべきであり、「呼吸→舌→嚥下(飲み込み)→口唇」の順番で改善をさせることが子供達には必要である。
舌小帯切除術(Tongue-tie release)・上唇小帯切除術(Lip-tie release)
顎の大きさに対して歯の形態が大きいので歯が入りきらず歯並びが悪くなるのではありません。顎の発育不全が起きているので本来の顎の大きさに成長していないから不正咬合が生じるのです。ではなぜ顎の発育不全が起きるのか。顎骨の形態は舌を含めた口腔周囲筋のバランスのとれた力によって出来上がるのであり、一日を通して舌が口蓋に張り付く時間が短い、もしくはほとんど付かない状態が続くと口蓋骨は本来の大きさに成長せず、歯が重なるだけではなく上顎骨が前方に成長すべきところを下方に成長をしてしまい、それに伴い下顎骨も後下方に成長し、子供であっても二重顎になりやすい骨格に成長します。舌が本来あるべき機能を果たすには、絶対条件として鼻呼吸であることが求められます。しかし現代においては口唇が開き、口で呼吸をする“お口ぽかん”のお子様が増えており、その根本原因として鼻閉、舌小帯異常があります。歯科領域においては舌小帯が短いことで舌の可動域が制限されている場合には、口腔の正しい発育を促すために舌小帯を切離(リリース)し、続けて習癖を取りのぞく筋肉のトレーニング(乳幼児では正しい母乳哺育をすることが筋機能トレーニングになる)を行います。乳幼児においては母乳哺育が出来ているつもりでも、正しい哺育が出来ていない場合には仮に体重が増加していたとしてもそれは母乳の出が多いことによる場合もあり、舌が正しくお母さんの乳首を口蓋に張り付けて哺育が出来ていなければ理想的な顎骨の成長発育は望めません。
従って当医院では1歳未満の乳幼児の舌小帯異常(舌小帯短縮症)、上唇小帯異常がある場合には、厳密な診査を行ったうえで、構音障害、口腔機能発育不全を防ぐ目的で小帯切離を行っております。赤ちゃんが上手くおっぱいを吸ってくれない、乳腺炎になりやすい、体重が減ってきた、舌がハート形になるなど他、気になることがある場合にはご相談ください。
予防には、歯科医院で行うプロフェッショナルケアと、ご自身で行うセルフケアの2つがあり、どちらかのケアだけを行うのではなく、歯科医院と皆様とで相談し合って両方に取り組むことが重要です。
当医院では食習慣やケアの仕方など、ライフスタイルに踏み込んだお話を伺い、お口の中をすみずみまでチェック。そして、お口の状況を詳しくお伝えするとともに、最適なケアの仕方、定期検診でご来院いただく間隔、それが必要な理由も含めてわかりやすくお伝えいたします。
従来の歯科治療では、痛みなどトラブルが発生してから治療し、治療後しばらくして再び同じようなトラブルに見舞われて再度治療するといったが多く、この場合、治療のたびに歯や歯周組織にダメージを与え、歯の寿命を縮めてしまうことになります。
当医院では、そのような悪循環を避け、皆様に余計な負担をかけないため、初診時にトラブルになった根本的な原因をしっかり突き止め、最適な治療を行った後、予防・メインテナンスの仕方をしっかりとお伝えいたします。
睡眠障害と不正咬合のに関連はある?
今や睡眠呼吸障害(SDB)は小児における病的状態として認識すべきであり、その有病率は最大25%です。
当医院にお越しになる子供達の睡眠時の様子を親御さんから伺うと、唇は開いている、呼吸が苦しそう、いびきがあるなどの声を多く聞きます。
データとして評価したものではないが、睡眠時無呼吸を疑わせるお子様がいるなど、子供達の成長と発達に大きな影響を与えている可能性があるり、更には、いびきをかいているだけで睡眠時無呼吸の患者さんに認められるようなADHD(注意欠陥・多動性障害)様所見や行動障害を引き起こす可能性があるともいわれています。
故Christian Guilleminault先生は、小児のSDBは口腔機能発達不全が関係しており、これは頭蓋顔面の発育に影響を及ぼすと述べています。
歯科でいう不正咬合とは本来生えるべきところに歯が入りきらないこと、上下顎骨の位置関係が正常な状態からずれていることを意味しますが、顎の発育不全が不正咬合の根本原因であることから不正咬合を単に歯科的な問題として捉えるのではなく、集中力の低下などを引き起こす睡眠呼吸障害(SDB)の予防及び改善処置として不正咬合を改善する必要があります。
お子様の成長速度は大人とは違います。落ち着きがないのは子供の性格ではない、大きないびきで寝ているのは成長している証ではないという認識のもと、早めの口腔内診査を勧めます。
人の身体の成長は気道を中心に発達します。言い換えれば、気道を確保できなければ生命に係わってくるので、姿勢を崩してでも気道を確保するように自律神経は働きかけます。
皆さんは正しい呼吸をされていますか?一日に呼吸を何回されますか?
口唇を閉じ、舌を口蓋につけて鼻呼吸することで成長途中の子供たちの中顔面が正しい方向に発達し、上顎骨も大きくなることで歯並びも自然と揃うようになります。
お口周りの筋肉のバランスが悪く、舌癖などがあると歯並びが乱れてしまい、お口だけでなく全身にも悪影響を及ぼしてしまうことがあります。当医院では、そういった悪影響を防ぐため、口腔内チェックで歯並びが乱れる兆候があった方には「口腔筋機能療法(最近では筋機能療法に呼吸と嚥下を加えている)」をご提案しております。
口腔筋機能療法はお口周りの筋肉のトレーニングや、咬む訓練などを行うことで、筋肉を正常な位置に安定させる療法です。歯並びだけでなく、食べたり飲んだりする活動、発音などの改善に役立ちます。
顎を動かしてくださいと患者さんに指示をすると、「顎って上の顎ですか、下の顎を動かすのですか?」と返ってくることがある。勿論動かすのは下顎のことであり、上顎は動かすことは出来ない。
口腔機能の食べる、話す行為は下顎を動かしますが、その下顎は頭蓋にぶら下がっており、その頭蓋は背骨の上に乗っているに過ぎません。下顎を正しい位置でしっかり機能させるためには、まず頭部を背骨でしっかり支えることが出来て、顎位が安定できる体幹を育成する必要があり、そのためには、赤ちゃんの正しい抱っこの仕方、座骨座りでのお座り、はいはいの推奨など、口腔機能に結び付く身体の基盤づくりが不可欠です。
当医院では助産師の協力にもと、乳幼児の授乳の仕方、舌小帯の可動域診査などを行い、口蓋の成長具合を模型に起こしながら診査し始めています。
健全な口腔機能が育成されればむし歯、歯周病は勿論、不正咬合が世の中から激減し、壮年期以降の不定愁訴でドクターショッピングすることも減ることでしょう。
子供達のADHD(注意欠陥・多動症)の増加と、口呼吸、不正咬合を有している子供達の増加との関連は疑う余地はないのではないでしょうか。
残念ながら、「いつもしっかりブラッシングしているから、むし歯も歯周病も大丈夫!」という訳にはいきません。大人も子どもも、生活習慣の乱れが口腔内のトラブルに結びつくことも多いため、次のことに注意して予防に努めましょう。
1 | 「口がさみしいから常に飴をなめる」「間食が多い」など、長時間口の中に食べ物がある状況は避けましょう。虫歯菌が繁殖しやすく、虫歯になりやすい状態になります。 |
2 | 姿勢が悪いと口呼吸になりがちで、唾液の分泌が悪くなり、虫歯菌が繁殖しやすい状況に。正しい姿勢を心がけましょう。 |
3 | 眠っている間は唾液の分泌が減って、虫歯菌が繁殖しやすくなります。眠る前のブラッシングはより丁寧に。 |
4 | 歯を磨いているのに、いつも同じところが磨けていないのは、口腔周囲筋がしっかりと動いてない(機能していない)からかも? |